日本株の優良銘柄を見つけるためのファンダメンタル分析5選
はじめに
日本株市場には数多くの上場企業が存在しますが、その中から長期的に安定した成長を期待できる「優良銘柄」を見つけ出すためには、企業の本質的な価値を見抜く分析力が欠かせません。テクニカル分析が株価の動きを重視するのに対し、ファンダメンタル分析は企業の実力や将来性を数字と事業内容から評価するものです。ここでは、日本株投資において注目すべきファンダメンタル分析の5つの視点を紹介します。
1. 業績分析
売上高・営業利益・純利益の推移を確認する
企業の健全性を判断する第一歩は、業績の傾向を把握することです。売上高が安定して増加しているか、営業利益率が改善しているかを確認します。特に日本企業の場合、営業利益率が5%を超える企業は収益構造が強固であると評価されることが多いです。また、単年度の業績だけでなく過去5年程度の推移を見ることで、景気変動にも耐える力を持っているかを判断できます。
2. 財務健全性
自己資本比率と有利子負債比率に注目する
財務の健全性は企業のリスク耐性を示す重要な指標です。自己資本比率が高い企業は、外部からの借入に依存しない経営を行っていることを意味し、倒産リスクが低い傾向にあります。目安としては、製造業で40%、非製造業で30%以上が望ましいと言われています。また、有利子負債比率を確認し、過度な借入によって資金繰りが逼迫していないかをチェックすることも大切です。
3. キャッシュフロー分析
営業キャッシュフローの安定性を確認する
企業の実際の稼ぐ力を測るうえで、キャッシュフローの視点は欠かせません。営業キャッシュフローが安定的に黒字で推移している企業は、本業でしっかりと資金を創出している証拠です。日本企業では、利益計上していても資金流入が伴わないケースがあり、損益計算書だけでは見抜けないリスクをキャッシュフロー分析で補うことができます。
4. 配当・株主還元政策
安定配当と持続的な増配実績を確認する
株主に対する利益還元の姿勢は、長期投資において重要な判断材料です。配当性向や過去の配当実績を参考に、経営陣がどの程度株主を重視しているかを確認します。特に日本企業では、キャッシュリッチ企業が増えており、内部留保を活かした安定配当政策を続ける企業が評価されています。減配を行わず、継続的に増配してきた企業は、安定したキャッシュフローと経営の持続力を併せ持つ可能性が高いです。
5. 成長性と企業の競争優位性
市場シェアと事業戦略を評価する
優良銘柄を選ぶ上で、成長性と競争優位性の分析は欠かせません。将来的に拡大が見込まれる市場で、他社にはない強み(ブランド力、技術優位、コスト競争力など)を持つかを判断します。たとえば、日本のエレクトロニクスメーカーや素材産業では、技術力や特許の多さが競争力の指標になります。また、経営陣が明確な中期経営計画を掲げ、その実現に向けた具体的施策を実行しているかも重要な評価軸です。
おわりに
ファンダメンタル分析は、一時的な株価の変動に惑わされず、企業の本質的な価値を見極めるための手段です。業績の安定性、財務の健全性、キャッシュフローの強さ、株主還元姿勢、そして成長戦略の5つの視点を総合的に判断することで、日本株市場における優良銘柄を見つけ出す可能性が高まります。長期的な視野で企業価値を見極め、堅実な投資判断を行うことが、安定した資産形成への第一歩となります。

もっと詳しく
1. 業績分析
具体例
業績分析の基本は、売上高、営業利益、経常利益、純利益の推移を確認することです。たとえば製造業の中堅企業A社は、国内需要が横ばいの中で海外展開を強化し、5年間で売上高を20%増加させました。一方で同業他社B社は、為替変動や原材料費高騰で利益率が低下しています。この差は経営戦略の選択やコスト管理能力の違いに起因しており、数字を見るだけでなく、その背後にある企業活動を読み解くことが重要です。
メリット
業績が安定成長している企業を選べば、長期的に株価上昇が期待できます。特に営業利益率が高い企業は、景気変動に強く、持続的な利益創出力を持っています。また、過去の業績推移を追うことで経営の一貫性を確認でき、短期的な好況に左右されにくい銘柄を見つけられます。
デメリット
一方で、業績分析は過去データに基づくため、将来の成長性を完全には予測できません。好調な業績が数年続いていても、業界構造の変化や技術革新によって企業の優位性が失われる可能性があります。
リスク
過去の業績だけを過信すると、景気敏感株の短期的な反発や一時的な特需による数字を誤って評価するリスクがあります。特にコロナ禍や原材料価格変動など、異常要因による一時的な業績拡大を実力と見なすのは危険です。
リスクの管理方法
定量分析に加えて、事業ポートフォリオの多様化や収益源の構造変化を時系列で確認することが有効です。数字の裏付けをニュースリリースや決算説明資料から検証し、成長が一過性でないかを判断します。
投資家としての対応策
業績が右肩上がりでも、利益率やROEが停滞している場合は要注意です。長期投資の観点からは、安定成長と収益性の両方を兼ね備えた企業を選び、短期的な業績変動に惑わされずに保有方針を維持することが大切です。
2. 財務健全性
具体例
財務の健全性を見るうえで鍵となるのは、自己資本比率と有利子負債比率です。例えば通信機器メーカーC社は自己資本比率が60%を超え、借入依存が低く、景気後退局面でも安定した経営が可能でした。対照的にD社は過剰な設備投資により有利子負債比率が高まり、金利上昇局面で負担が増大しています。
メリット
自己資本が厚い企業は外的ショックに強く、金融機関からの信用度も高いです。資金調達コストが低下し、長期的な設備投資や研究開発に積極的に取り組める点がメリットです。
デメリット
一方で借入を抑制しすぎると、成長機会を逃すおそれがあります。たとえばレバレッジを効かせた積極的な投資で成長する企業に比べ、資本効率が低くなる可能性があります。
リスク
過剰な借入を継続すると、景気悪化時に返済負担が経営を圧迫し、倒産リスクが高まります。また、為替リスクを伴う外貨建て債務を多く抱える企業では、円安局面で金利負担が拡大することもあります。
リスクの管理方法
定期的にキャッシュフロー計算書と貸借対照表を確認し、短期・長期負債のバランスを確認します。格付機関の評価や社債利回りもチェックすると、外部評価を通じた財務健全性の客観的確認が可能です。
投資家としての対応策
財務体質の安定した企業へ長期投資することで、想定外の市場変動にも耐えやすくなります。ROEやROAといった資本効率指標も並行して確認し、過度な保守経営に陥っていないかを見極める姿勢が求められます。
3. キャッシュフロー分析
具体例
企業E社は、売上高が前年比で5%しか増加していないにもかかわらず営業キャッシュフローが大幅に改善し、営業活動の効率化が進んでいます。一方で、F社は利益計上していても在庫増加でキャッシュが減少し、実際の資金繰りが悪化しています。これが損益では見えない経営健全性の差です。
メリット
キャッシュフローの安定した企業は、配当や自社株買いなどの株主還元にも積極的に取り組めます。また、黒字の営業キャッシュフローは、経営の継続可能性を示す信頼性の高い指標です。
デメリット
短期的なキャッシュの増減だけを見ると誤解を招く場合があります。設備投資や研究開発を積極化する成長企業では、一時的にフリーキャッシュフローがマイナスでも、それが長期成長のための支出であることもあります。
リスク
キャッシュフローが赤字で推移すると、資金調達に依存する構造になり、金利上昇や金融引き締め時に資金難に陥る恐れがあります。また、投資キャッシュフローの急増は無駄な拡張投資の兆候である場合もあります。
リスクの管理方法
営業・投資・財務キャッシュフローの3区分を総合的に見ることが重要です。投資キャッシュフローと営業キャッシュフローのバランスを長期的に追跡し、本業での稼ぎが健全に投資へ循環しているかを確認します。
投資家としての対応策
営業キャッシュフローが安定的に黒字の企業を中心にポートフォリオを組むと、財務リスクを抑えられます。決算書の数字だけでなく、資金の流れを定性的に分析し、キャッシュ創出能力を評価することが長期投資を成功させる鍵です。
4. 配当・株主還元政策
具体例
食品メーカーG社は20年以上連続で増配を続け、安定した株主還元姿勢を維持しています。一方、景気変動に左右されやすいH社は利益変動に応じて減配を繰り返しており、長期保有者の信頼を失いました。
メリット
安定した配当は投資リターンの下支えとなり、不安定な相場局面でも安心感を与えます。また、企業が増配を継続している場合、経営陣が将来の業績に自信を持っていることを示すサインにもなります。
デメリット
高配当政策を維持しすぎると、成長投資に回す資金が不足するリスクがあります。特に業界変化が速い分野では、内部留保を有効活用できない企業が競争力を失う可能性があります。
リスク
業績悪化や経済不況時に無理な配当を維持すると、財務負担が増し企業価値を損ねます。一方で、減配発表が株価を急落させるリスクもあります。
リスクの管理方法
配当性向やフリーキャッシュフローとのバランスを確認し、持続可能な範囲での株主還元かを見極めます。無配から増配を始めた企業にも注目し、還元姿勢の変化をチャンスと捉えることも重要です。
投資家としての対応策
長期的に安定配当を維持している企業を主軸にポートフォリオを構築します。配当利回りだけに注目せず、配当の持続可能性と企業成長のバランスを考慮した選択が望ましいです。
5. 成長性と競争優位性
具体例
自動車部品メーカーI社は、電動化の潮流を先取りして新規市場を開拓し、国内外でシェアを拡大しています。これに対して、伝統的な製品依存のJ社は市場構造変化への対応が遅れ、成長が停滞しています。事業ポートフォリオの柔軟さが競争優位性を左右しています。
メリット
競争優位性の高い企業は、市場変化に強く安定的に成長できます。ブランド力や技術力を持つ企業は、価格競争に巻き込まれにくく、長期的に高収益を維持しやすいです。
デメリット
成長分野への過度な依存は、技術革新や政策変更の影響を大きく受ける可能性があります。また、高成長企業は株価に過度な期待が織り込まれやすく、調整局面での下落リスクが高いです。
リスク
新興分野への投資が失敗すると、巨額の減損損失を被る場合があります。さらに、海外進出に伴う為替リスクや地政学リスクも見逃せません。
リスクの管理方法
事業分散と財務健全性を両立する企業を選ぶことで、特定分野への依存リスクを軽減できます。また、経営方針や事業計画を定期的に分析し、将来の競争環境に対応できる柔軟性を確認します。
投資家としての対応策
市場全体のトレンドと企業個別の強みを照らし合わせ、成長分野でも実績のある企業を選定します。短期的なテーマ株に走らず、持続可能な成長力と競争優位性の維持を重視する姿勢が日本株投資の成功に直結します。
追加情報
日本株の優良銘柄を見つけるためのファンダメンタル分析をより深めるには、既存の5つの視点に加えて、外部環境や企業行動の変化を踏まえた追加の観点が役立ちます。ここでは、投資判断の精度を高めるために押さえておきたい重要なテーマを整理し、実務的な視点から詳細をまとめます。
1. 日本企業特有のガバナンス構造の変化
日本企業では、近年ガバナンス改革が進んでいますが、企業ごとに進捗の差が大きく、投資家が見極めるべきポイントが増えています。
- 社外取締役の比率や役割の実効性を確認することで、経営の透明性や意思決定の質を判断できる。
- 資本効率を重視する企業と、依然として内部留保を優先する企業の差が株主還元姿勢に直結する。
- 経営陣の交代や組織再編の動きは、中長期の企業価値に影響するため、決算資料だけでなくIRイベントの内容も重要な判断材料となる。
2. 日本市場における人口動態リスクと企業の対応力
国内市場の縮小は多くの企業にとって避けられない課題であり、成長性の評価には人口動態の影響を踏まえる必要があります。
- 少子高齢化による国内需要の縮小に対し、事業ポートフォリオをどのように再構築しているかが企業の将来性を左右する。
- 人手不足に対応するための自動化投資や業務効率化の取り組みは、長期的な収益力に直結する。
- 国内依存度が高い企業は、外部環境の変化に弱く、業績の安定性に影響が出やすい。
3. サプライチェーンの脆弱性と地政学リスク
企業の競争力は、製品やサービスだけでなく、調達・生産・物流の安定性にも左右されます。
- 特定地域への依存度が高い企業は、供給網の混乱や規制強化の影響を受けやすい。
- 代替調達先の確保や在庫戦略の見直しなど、リスク分散の取り組みが企業の持続性を左右する。
- 地政学リスクの高まりにより、製造業だけでなくIT・サービス業でも影響が広がっているため、企業の対応力を確認する必要がある。
4. 日本企業の研究開発力と技術更新のスピード
成長性や競争優位性を評価する際、研究開発の質とスピードは重要な指標となります。
- 研究開発費の多寡だけでなく、成果が事業化されているかどうかが本質的な評価ポイント。
- 技術革新のスピードが速い業界では、既存の強みが短期間で陳腐化するリスクがある。
- 特許の取得状況や技術提携の動きは、企業の将来の収益源を読み解く手がかりになる。
5. 日本企業におけるコスト構造の変化と価格転嫁力
インフレ環境が続く中、企業の収益力はコスト管理と価格転嫁力に大きく左右されます。
- 原材料費や人件費の上昇に対し、価格転嫁ができている企業は利益率を維持しやすい。
- 固定費の比率が高い企業は、景気後退局面で利益が急落しやすく、業績の安定性に影響する。
- サプライチェーンの見直しや生産効率化の取り組みは、長期的な収益構造の改善につながる。
6. 国内外の規制強化が企業に与える影響
規制環境の変化は、企業の事業戦略や収益構造に直接影響します。
- 業界ごとの規制強化により、事業モデルの転換を迫られる企業が増えている。
- 規制対応に必要なコストが増加し、短期的な利益を圧迫するケースもある。
- 規制の影響を受けにくい事業構造を持つ企業は、外部環境の変化に強い。
7. 日本企業のM&A戦略と事業再編の動き
企業価値の向上には、既存事業の強化だけでなく、事業再編やM&Aも重要な要素です。
- 買収後の統合プロセスが成功しているかどうかは、長期的な収益力に大きく影響する。
- 不採算事業の切り離しや選択と集中の動きは、企業の資本効率改善につながる。
- 無理な拡大戦略を取る企業は、財務リスクが高まりやすく注意が必要。
8. 国内市場の構造変化と企業の適応力
日本市場では、消費行動や産業構造が大きく変化しており、企業の適応力が問われています。
- デジタル化の遅れは競争力低下につながりやすく、企業間の格差が拡大している。
- 消費者ニーズの変化に対応できない企業は、業績が長期的に停滞するリスクがある。
- 新規事業への挑戦やビジネスモデルの転換が進んでいる企業は、変化に強い傾向がある。
日本株の優良銘柄を見極めるためのQ&Aガイド
日本株の中から長期的に成長が期待できる企業を選ぶには、企業の本質的な価値を見抜く力が欠かせません。この記事では、ファンダメンタル分析の重要ポイントを、初心者でも理解しやすいQ&A形式で整理します。業績、財務、キャッシュフロー、株主還元、成長性といった基本視点に加え、近年の日本企業に特有のリスクや構造変化も含めて解説します。
Q&Aで学ぶ日本株のファンダメンタル分析
Q1:まず何を見れば「業績が良い企業」だと判断できますか?
A:基本は売上高、営業利益、純利益の推移です。特に営業利益率が5%を超える企業は、日本市場では収益構造が強いと評価されやすい傾向があります。単年度だけでなく、過去5年ほどの推移を見ることで、景気変動に耐える力があるかどうかも判断できます。例えば、海外展開を強化して売上を5年間で20%伸ばした企業と、原材料高で利益率が低下した企業では、経営戦略の質が大きく異なります。
Q2:財務の健全性はどこを見ればわかりますか?
A:自己資本比率と有利子負債比率が重要です。製造業なら40%以上、非製造業なら30%以上が一つの目安とされています。例えば、自己資本比率60%超の企業は景気後退局面でも安定しやすい一方、過剰な借入を抱える企業は金利上昇局面で資金繰りが悪化するリスクがあります。財務の強さは、外部ショックへの耐性にも直結します。
Q3:キャッシュフローはなぜ重要なのですか?
A:キャッシュフローは企業の「実際の稼ぐ力」を示すためです。営業キャッシュフローが安定して黒字なら、本業でしっかり資金を生み出している証拠です。利益が出ていても在庫増加でキャッシュが減る企業もあり、損益計算書だけでは見抜けないリスクを補う役割があります。資金の流れを確認することで、経営の健全性をより正確に把握できます。
Q4:配当や株主還元はどのように評価すれば良いですか?
A:配当性向や増配実績を確認します。20年以上増配を続ける企業もあり、こうした企業は安定したキャッシュフローと株主重視の姿勢を持っている可能性が高いです。一方で、無理に配当を維持すると財務負担が増し、企業価値を損なうこともあります。配当利回りだけでなく、持続可能性を重視することが大切です。
Q5:成長性や競争優位性はどのように見極めれば良いですか?
A:市場シェア、技術力、ブランド力、価格転嫁力などを確認します。例えば、自動車部品メーカーが電動化の流れを先取りして新市場を開拓し、国内外でシェアを伸ばすケースがあります。逆に、既存製品に依存し続ける企業は市場変化に対応できず成長が停滞することもあります。事業ポートフォリオの柔軟性は重要な判断材料です。
Q6:日本企業特有のリスクにはどんなものがありますか?
A:ガバナンスの質、人口減少、サプライチェーンの脆弱性、規制強化などが挙げられます。例えば、少子高齢化による国内市場縮小にどう対応しているか、特定地域に依存した調達構造を見直しているかなどは、長期的な企業価値に影響します。また、研究開発のスピードが遅い企業は技術革新に取り残されるリスクがあります。
Q7:投資初心者が特に注意すべきポイントはありますか?
A:数字だけに頼らず、背景を読み解く姿勢が重要です。例えば、利益が増えていても一時的な特需によるものだったり、企業発表が楽観的すぎたりするケースがあります。また、業界に偏った投資は外部環境の変化で大きな損失につながることもあります。分散投資と長期視点を持つことが、初心者にとって特に大切です。
Q8:結局、優良銘柄を見つけるための最重要ポイントは何ですか?
A:一つの指標に頼らず、業績・財務・キャッシュフロー・株主還元・成長性を総合的に判断することです。どれか一つが優れていても、他が弱ければ長期的な成長は期待しにくくなります。企業の強みと弱みを同時に見つめ、変化の兆しを捉える姿勢が、優良銘柄を見極める力につながります。
まとめ
日本株の優良銘柄を見つけるには、数字の裏にある企業の実態を丁寧に読み解くことが欠かせません。業績の安定性、財務の強さ、キャッシュフローの健全性、株主還元姿勢、そして成長戦略を総合的に評価することで、長期的に価値を生み出す企業を見つけやすくなります。まずは決算資料を読み、5つの視点をチェックする習慣をつけることが、投資判断の精度を高める第一歩です。
あとがき
企業分析を始めた頃の戸惑い
株式投資を始めた頃、数字に表れる企業の姿が何を意味しているのか正確に理解できず、戸惑う場面が多くありました。決算書の数値を見ても、それが本当に業績の良し悪しを示しているのか、判断の根拠が定まりませんでした。特に、利益が増えているのに株価が下がることがあり、数字と市場の動きが一致しない理由を理解するまでに時間がかかりました。企業の評価は単なる増減ではなく、背景にある構造変化や市場環境を踏まえる必要があることを実感しました。
数字だけに頼った失敗
初めは、売上高や利益の推移だけを見て投資判断を下していました。しかし、利益が一時的に上がっただけの企業に投資し、数か月後には業績が急落した経験があります。好調に見えた数字の裏に、原材料価格の安定や為替の追い風といった一過性の要因があったのです。この時、数字を鵜呑みにすることの危うさを学びました。業績の安定性や経営方針の継続性を見抜くためには、決算資料の注記や事業説明まで丁寧に読む必要があると感じました。
財務内容の読み誤り
財務指標にも苦い思い出があります。自己資本比率が高い企業を「安全」と思い込み投資したところ、業績回復力が鈍く株価が長く停滞しました。慎重すぎる経営で成長投資を行わない企業もあることを、その時は理解していませんでした。逆に、借入金の多い企業を避けたために、積極的な設備投資で業績を伸ばした企業を逃したこともあります。財務の数字は強弱の単純な指標ではなく、経営姿勢や産業構造によって意味が変わるという点を身をもって知りました。
キャッシュフローを軽視した反省
当初は損益計算書の数値を中心に見ており、キャッシュフローにはあまり注意を払っていませんでした。その結果、黒字決算を発表していた企業が資金繰りの悪化で株価を急落させたとき、現金の流れを軽視していた自分の判断の甘さに気づきました。営業キャッシュフローが継続的に黒字である企業は、やはり底堅い経営基盤を持っています。資金の流れこそ、企業の実力を最も正直に映し出すものだと反省しました。キャッシュの裏付けがない利益は、長続きしないと痛感しました。
配当に安心しすぎた経験
配当利回りの高さに惹かれて投資し、数年後に減配を経験したことがあります。その企業は一時的に業績が悪化し、無理に配当を維持し続けた結果、財務負担が重くなっていました。高配当は魅力的ですが、それが持続可能かどうかを見誤ると痛手になります。配当性向が過度に高い企業は、経営環境の変化に弱いことを後で理解しました。数字の魅力に安心感を抱きすぎたことで、企業の内実を見落とした失敗でした。
成長性を追いすぎた結果
市場で話題になっていた成長企業の株を購入した際、短期間で株価が急上昇しましたが、その後、急落して含み損を抱えた経験もあります。その企業は新市場で急成長していたものの、競合参入が進むと利益率が急低下しました。成長分野でも競争が激しくなれば安定性が失われることを学びました。当時の私は、成長性に注目するあまり、持続的な競争優位があるのかどうかを考えませんでした。投資判断を数字の勢いだけで決めたことへの反省です。
企業の発表をそのまま信じた誤り
企業の決算発表やニュースを見て楽観的に受け止めたこともあります。特に業績見通しの上方修正など、前向きな数字を強調する報道に影響され、深く調べずに株を購入しました。しかし、実際には利益率の低下や販管費の増加が隠れており、数か月後には業績修正で株価が下落しました。情報を受け取る際は、企業の発表内容を自分の目で確かめ、なぜその数字が発表されたのか背景を考える姿勢が必要だと改めて感じました。
投資環境の変化に対応できなかった反省
業績が堅調だった企業でも、市場の環境変化に対応できずに苦戦することがあります。外部環境の変化を軽視してしまい、結果的に投資タイミングを逃した経験があります。特に円高や政策変更は企業の利益構造を大きく変えるため、一時的な業績好調をそのまま将来へ当てはめるのは危険だと感じました。自分の判断基準が景気の波に偏っていたことを省みるきっかけになりました。
分析に偏りがあったことへの気づき
分析を繰り返すうちに、どうしても数値面ばかりを重視する傾向がありました。財務指標や利益率を見ることに集中し、企業の事業特性やブランド力、経営者の戦略意識を見逃したことがあります。数値は現状を示しますが、企業を成長に導くのは経営判断です。定性的な要素を軽視したことで、企業の潜在力を見誤ったことがありました。後になってから、経営陣の考え方や事業の方向性を読み取る重要性を理解しました。
長期投資の難しさを感じた出来事
優良銘柄を見極めたつもりでも、短期的な株価変動に心が揺れたことがありました。特に決算発表で一時的に株価が下落すると焦り、売却してしまったことがあります。その後、業績が回復して株価が上がり、早まった判断を悔やみました。企業価値は短期の株価変動よりも時間をかけて成果が現れるものであり、数字の上下に一喜一憂しない冷静さを持たねばならないと反省しています。
分散を怠ったことによる影響
注目している業界に集中して投資を行った結果、業界全体の調整で大きな損失を出したことがありました。同じ業種の企業は同様の要因で値下がりすることが多く、短期間でポートフォリオ全体が不安定になりました。個別企業の分析を重ねても、外部要因による影響を完全に避けることはできません。分散の意味を理解していながら、実際の投資行動では徹底できていなかったことを痛感しました。
まとめ
これまで日本株のファンダメンタル分析を通じて学んだのは、数字の裏にある企業の現実をできるだけ正確に捉えることの難しさです。業績や財務の健全性、キャッシュフロー、株主還元、成長性のどれか一つに偏ると、誤った結論を導く可能性があります。数字は企業の姿を映しますが、背景の理解がなければ意味を持ちません。初心者の方が分析を始める際も、この点には注意が必要です。自分が経験した失敗や戸惑いは、どれも企業を一面的に見たことに原因がありました。企業の強みと弱みを同時に見つめ、変化の兆しに気づくことが、長く市場に関わるうえで欠かせない姿勢だと思います。どんな分析法にも限界があり、完璧な判断は存在しません。だからこそ、一つ一つの数字の意味を丁寧に考え、見誤った経験を次に生かすことで、少しずつ企業を見る目を養っていくことが大切だと感じています。

