日本株の優良銘柄を見極めるためにチェックすべき指標5選
1.ROE(自己資本利益率)
企業の収益性を測る中核指標
ROE(Return on Equity)は、株主が投じた資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを示す指標です。一般的には10%を超える企業が優良とされます。ただし、単年度ではなく過去3〜5年の推移を見ることが重要です。安定して高いROEを維持している企業は、効率的な経営資源活用がなされている傾向にあります。
2.営業利益率
本業の強さを確認する指標
営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合を示し、競争優位性や本業の収益力を映し出します。業界平均より高い営業利益率を安定して維持している企業は、価格競争に巻き込まれにくく、ブランドや技術力による差別化が進んでいる可能性があります。
3.自己資本比率
財務の健全性を判断する目安
自己資本比率は、総資産のうち自己資本が占める割合を示します。一般に40%以上であれば財務的に安定しているとみなされます。自己資本比率が低いと、外部借入に依存している可能性があり、金利上昇局面や景気悪化時にはリスクが高まります。反対に高すぎる場合は、成長投資への積極性に欠ける可能性もあるため、バランスを見る視点が大切です。
4.フリーキャッシュフロー
企業の「稼ぐ力」と投資余力を示す
フリーキャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローから投資活動による支出を差し引いた数値で、実際に自由に使える資金を意味します。プラスが続く企業は、安定的に資金余力を確保しており、株主還元や新事業への投資を柔軟に行うことができます。黒字企業でもフリーキャッシュフローがマイナスの場合は注意が必要です。
5.配当性向と株主還元姿勢
持続的成長と株主利益の両立を確認
配当性向は、利益のうちどれだけを株主に還元しているかを示します。安定配当を継続している企業は、安定収益基盤があるとともに株主重視の経営姿勢が伺えます。また、自社株買いの有無なども加味すると、より正確に株主還元方針を判断できます。短期的な高配当よりも、長期的に増配を続ける企業こそが、真に株主を重視しているといえます。

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1.ROE(自己資本利益率)
具体例
たとえば、トヨタ自動車のように安定した収益構造を持つ企業では、自己資本に対して10%前後のROEを長期的に維持しています。一方、製造業や銀行業のように業種によって平均値が異なるため、単純な数値比較よりも業界内での相対評価が重要です。同じ自動車業界でも、メーカーごとに資本構成や事業モデルが異なるため、ROEが8%でも安定的な経営を示す場合があります。
メリット
ROEは企業の資本効率を明確に把握できる指標です。株主にとって「投資した資金がどの程度の利益を生み出しているか」を知る手掛かりとなります。特にROEが長期的に高水準で推移している企業は、資本コストを上回る利益を生み出している可能性が高く、企業価値の向上が期待できます。
デメリット
ROEは総資産や負債構成に左右されやすく、単独では企業の実態を正確に表せないことがあります。自己資本を減らして一時的にROEを引き上げる手法もあり、良好な数値でも実際には財務リスクが高まっているケースがあります。
リスク
ROEを過度に追求するあまり、企業が借入金によって自己資本を圧縮し、短期的な収益性を誇張する危険性があります。この戦略は景気後退局面で大きな痛手となり、倒産リスクの拡大につながります。
リスクの管理方法
ROEだけでなく、自己資本比率やD/Eレシオ(負債資本倍率)を併せて確認することが有効です。利益率と安全性のバランスを見ることで、ROEの高さが実力によるものか、財務操作によるものかを判断できます。
投資家としての対応策
投資家はROEの水準よりも「継続性」と「改善傾向」を重視すべきです。5年以上のスパンでROEが安定して高水準を保つ企業は、長期的に収益力を確立している証拠であり、中長期投資の対象として有望と考えられます。
2.営業利益率
具体例
例えばキーエンスは営業利益率が50%前後と極めて高く、同業他社との差別化に成功しています。このような高収益企業は高付加価値な製品を提供し、価格競争に巻き込まれにくい特徴を持ちます。一方、食品や小売などは原価率や競争環境の影響を強く受けるため、5〜10%程度でも十分高い水準と考えられます。
メリット
営業利益率が高い企業は、本業から安定的に利益を得られる構造を持っています。原材料価格の変動や景気の影響を受けにくく、企業の本源的な強さを示します。利益率が高い企業ほど、投資や研究開発に回せる余力が生まれ、持続的な成長に寄与します。
デメリット
利益率が高すぎる場合、競合が市場に参入する誘因を高める可能性があります。また、一時的にコスト削減で利益率を引き上げている企業もあり、長期的には品質や顧客満足度の低下につながる恐れがあります。
リスク
原材料の高騰や物流コストの増加によって、営業利益率が急低下するリスクがあります。また、海外展開による為替変動も利益率を直撃する要因となります。
リスクの管理方法
利益率の変動要因を分解分析し、原価率・販管費・為替など主要項目の推移を定期的に確認することが重要です。固定費を抑える経営体質を持つ企業ほど、収益の変動幅を小さく抑えられます。
投資家としての対応策
営業利益率の水準だけでなく、過去の安定性を重視しましょう。リーマンショックやコロナ禍のような不況期でも黒字を維持している企業は、持続的収益力が高いと判断できます。
3.自己資本比率
具体例
任天堂は自己資本比率が80%以上と極めて高い水準を維持しています。これは強固な財務基盤を持ち、外部借入に依存せずに新規開発投資を続けられることを示しています。一方、成長企業では30〜40%程度でも攻めの投資を続けながら健全に経営するケースもあります。
メリット
自己資本比率が高い企業は、景気変動や金利上昇に対する耐性があります。金融不安が発生しても倒産リスクが低く、長期投資で安心感を得やすい特性を持ちます。
デメリット
高すぎる自己資本比率は、効率的に資金を活用できていない状況を意味する場合もあります。リスクを取らなすぎるために成長機会を逃し、資本効率が悪化するケースが見られます。
リスク
安定志向が強すぎる企業は、事業拡大や新規市場参入に消極的になる傾向があります。資金の遊休化が進み、株主価値の向上が停滞するリスクがあります。
リスクの管理方法
企業が積極投資と安定財務のバランスを取っているかを確認します。内部留保の増加と同時にROEが低下している場合は、資本効率の改善余地があると判断できます。
投資家としての対応策
企業の成長戦略と財務戦略を総合的に分析し、単なる「安定志向」ではなく、「効率の良い安定性」を備えているかを見極めることが重要です。
4.フリーキャッシュフロー
具体例
信越化学工業は長年にわたり安定したフリーキャッシュフローを創出しています。営業活動で得た現金が潤沢でありながら、設備投資や研究開発にも積極的に資金を振り向けています。これが高い株主還元余力と持続的成長の原動力となっています。
メリット
黒字経営であってもキャッシュ不足に陥る企業がある中、フリーキャッシュフローが安定してプラスの企業は資金繰りの心配が少なく、経営の柔軟性が高いです。株主への配当や自社株買いなどの戦略を自由に取れる点も魅力です。
デメリット
一時的に設備投資を増やすとフリーキャッシュフローがマイナスになるため、短期的には悪化して見える場合があります。その数値だけで判断すると、成長投資を誤って否定してしまうリスクがあります。
リスク
過度な設備投資やM&Aによる資金繰り悪化が、企業の資本構成を圧迫する可能性があります。また、キャッシュフローのマイナスが続くと借入依存度が高まり、金利上昇局面で支出が膨らむリスクがあります。
リスクの管理方法
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの双方を確認し、「何にどれだけ使っているか」を把握します。フリーキャッシュフローの推移を5年以上の長期スパンで観察することが重要です。
投資家としての対応策
短期的なマイナスではなく、その資金が将来的に収益性向上につながるかどうかを見極めましょう。設備投資や研究開発が順調に成果を生んでいる企業は、長期的なリターンを狙える好対象です。
5.配当性向と株主還元姿勢
具体例
花王は安定した配当政策で知られ、30年以上連続で増配を続けています。また、資生堂のように自社株買いと配当を組み合わせて株主還元を強化する企業も増えています。こうした姿勢は株主の信頼を高め、長期投資を促進する効果があります。
メリット
配当性向が適正で、かつ増配傾向を持つ企業は安定的な利益創出力を持っています。長期保有によるインカムゲインが得られやすく、資産形成にも寄与します。還元方針の透明性が高い企業は、経営陣と株主の利益が一致しやすい傾向があります。
デメリット
過度な配当維持や株主還元は、内部留保の減少を招き、成長投資の余力を奪います。配当重視が過ぎると将来の競争力が低下する可能性があります。
リスク
業績悪化局面で高い配当を維持すると、財務体質が悪化する危険があります。また、無理な自社株買いがROEを一時的に上げても実態が伴わない場合、評価の反転が起こるリスクもあります。
リスクの管理方法
配当性向を一定範囲に維持しつつ、フリーキャッシュフローや利益剰余金とのバランスを取る企業を選定することが重要です。株主還元と成長投資の両立を掲げる企業の方が長期安定性に優れています。
投資家としての対応策
単なる「高配当」に注目するのではなく、「増配の継続性」と「配当原資の健全さ」を確認することが肝心です。長期にわたり安定増配を実現できる企業こそ、株主への誠実な姿勢を持つ優良企業といえます。
比較してみた
「優良銘柄を指標で選ぶ」視点と、反対に「良さそうな指標の裏に潜む弱点や罠に注目する」視点を並べて比較します。前者は効率や安定性を評価するアプローチ、後者は持続性を脅かす構造的リスクや一時要因を見抜くアプローチです。両者を併用することで、見落としのない現実的な選定に近づけます。
| 観点 | 優良指標で選ぶ | 弱点・罠に注目する(反対テーマ) |
|---|---|---|
| 焦点 | 収益性・安定性・資本効率の高さ | 一時要因・粉飾まがい・持続性の欠如・潜在リスク |
| 主な材料 | ROE、営業利益率、自己資本比率、FCF、配当姿勢 | 減価償却調整、運転資本悪化、過度なレバレッジ、資本政策の歪み |
| 捉えやすい動き | 定常的な利益成長、競争優位、安定配当 | 急伸の反動、不可逆な需要縮小、収益源の集中、ガバナンス弱体 |
| 典型的な落とし穴 | 単一指標への過信、過去データ偏重 | 過度な悲観で機会損失、短期ノイズの誤認 |
| 時間軸 | 中長期の安定成長を重視 | 中長期の持続可能性を疑い、脆弱性を検証 |
| 行動スタイル | 強みの積み重ねを評価 | 構造的弱点の洗い出し・回避 |
対立する視点の概要
優良指標に基づく選定は「効率の高さ」と「安定性」を証明する材料を積み上げる手法です。反対テーマは、見栄えする数値の裏にある「持続しない収益」「一過性の追い風」「資本政策の歪み」「ガバナンスの綻び」を先に洗い出します。どちらが正しいという話ではなく、同じ企業を両側から照らして偏りを減らすための補完的な視点です。
弱点・罠に注目するためのチェックポイント
- 一時要因の濃度: 単発大型案件、補助金、会計上の利益計上タイミングに依存していないか。
- 運転資本の質: 売掛金・在庫が増え続けて資金が滞留していないか(回転日数の悪化)。
- キャッシュの裏付け: 利益は伸びてもFCFが枯れていないか(営業CF−投資CFが継続的にマイナス)。
- レバレッジの水準: 借入増で自己資本効率が見かけ上改善していないか(負債依存によるROE上振れ)。
- 収益源の集中: 顧客・製品・地域の集中度が高すぎないか(代替リスクと価格決定力の低下)。
- 資本政策の歪み: 自社株買いが利益成長ではなく株価対策に偏っていないか(EPSの見かけ改善)。
- コストの後ろ倒し: 研究開発や維持投資の削減で短期利益を演出していないか(将来の競争力毀損)。
- ガバナンスの脆弱性: 監査指摘、関連当事者取引、情報開示の遅延・曖昧さがないか。
- 非財務の扱い: スローガン的な取り組みを成果と混同していないか。外形的な合言葉は業績の保証にはなりません。
指標が良くても警戒したいシナリオ
- ROEの高止まりが負債依存: 自己資本の圧縮や借入増で分母を小さくし、見かけ上の効率が上がっている。
- 営業利益率の上振れが一過性: 原材料価格の一時下落や為替追い風で、平常時の収益力は高くない。
- 自己資本比率が高すぎる: 成長投資を避けることでリスクは低いが、機会を逃し収益基盤が痩せる。
- FCFがマイナス継続: 伸びている売上に比べ、運転資本と維持投資が過大でキャッシュ創出力が伴わない。
- 配当性向の見栄え: 利益が横ばいでも配当維持のために内部の柔軟性を削り、脆さが増す。
実務での比較アプローチ
まず優良指標で候補を絞り、その直後に弱点チェックリストでふるいにかけます。例えば、ROEは「利益/自己資本」で見ますが、同時に負債や自己株買いの影響を確認して、効率の源泉が持続的な収益力かを検証します。営業利益率の推移は原材料・為替の影響分を切り分け、在庫回転・売掛回収の指標で現場の質感を補います。数値が良くても、キャッシュとガバナンスで裏付けできなければ採用を見送る判断を徹底します。
まとめと行動
- 両面評価の徹底: 「良い理由」と「崩れる理由」を同じ熱量で検証する。
- 一時要因の排除: 直近の追い風を外し、平常時の収益力で再評価する。
- キャッシュの重視: 利益よりも継続的なFCFを軸にする(営業CF−投資CFの持続性)。
- 資本政策の健全性: 成長投資と還元のバランスに歪みがないかを追う。
- ガバナンスと開示: 透明性と是正行動の速さを確認する。
「良さそう」に見える数値を鵜呑みにせず、崩れやすい土台を先に見抜くこと。比較で偏りを減らせば、期待ではなく現実に寄り添った選定ができます。
追加情報
優良銘柄を見極めるための指標に加えて、投資判断をより現実的にするために押さえておきたい追加情報があります。これらは数値だけでは見えにくい企業の持続性や市場環境を理解する上で役立ちます。
業界特性の理解
同じ指標でも業界ごとに平均値や重要度が異なります。製造業では設備投資が重く、フリーキャッシュフローが一時的にマイナスになることが多い一方、サービス業では営業利益率の安定性が重視されます。業界特性を踏まえた比較が欠かせません。
マクロ環境の影響
金利動向や為替変動は企業の財務指標に直接影響します。特に外部借入に依存する企業は金利上昇局面でリスクが高まり、輸出比率の高い企業は為替の変動によって利益率が大きく変動します。指標を評価する際には、こうした外部環境を加味する必要があります。
ガバナンスと情報開示
数値が良好でも、ガバナンスが弱い企業は長期的にリスクを抱えます。監査指摘や情報開示の遅れは、投資家にとって不安材料となります。透明性の高い企業ほど、指標の信頼性も高まります。
成長戦略との整合性
自己資本比率や配当性向は、企業の成長戦略と密接に関わります。安定性を重視しすぎると成長機会を逃し、逆に投資を優先しすぎると財務リスクが高まります。企業がどのようなバランスを取っているかを確認することが重要です。
過去の失敗事例から学ぶ
指標が良好でも短期的な要因に依存していた企業は、後に減益や減配に直面することがあります。過去の失敗事例を振り返ることで、同じ過ちを避けるための視点を養うことができます。
投資家の行動心理
市場は必ずしも合理的に動くわけではなく、投資家心理によって株価が過剰に上下することがあります。指標を冷静に分析しても、感情に流されて売買を誤るケースは少なくありません。冷静さを保つための仕組みを自分の投資ルールに組み込むことが有効です。
これらの追加情報を踏まえることで、単なる数値評価にとどまらず、企業の持続性や市場環境を総合的に理解する投資判断が可能になります。
初心者でもわかる!日本株の優良銘柄を見極めるQ&A
株式投資を始めたばかりの人にとって、「どの銘柄を選べばいいのか」は大きな悩みです。本記事では、日本株の優良銘柄を見極めるための重要な指標を、初心者でも理解しやすいようにQ&A形式で整理しました。具体的な事例を交えながら、投資判断に役立つ知識をまとめています。
Q&Aセクション
Q1: ROEって何?どうして重要なの?
A: ROE(自己資本利益率)は、株主が投じた資本に対してどれだけ利益を生み出しているかを示す指標です。一般的には10%以上が優良とされます。例えばトヨタ自動車は長期的に10%前後を維持しており、効率的な経営資源活用を示しています。単年度だけでなく、3〜5年の推移を確認することが大切です。
Q2: 営業利益率はどんな意味があるの?
A: 営業利益率は売上高に対する営業利益の割合で、本業の強さを示します。例えばキーエンスは50%前後と非常に高く、競争力の高さを証明しています。食品や小売業では5〜10%でも高水準とされるため、業界ごとの平均値と比較することが重要です。
Q3: 自己資本比率はどのくらいあれば安心?
A: 自己資本比率は総資産に占める自己資本の割合で、財務の健全性を測る指標です。一般的には40%以上で安定とされます。任天堂は80%以上を維持しており、外部借入に依存せず強固な財務基盤を持っています。ただし高すぎる場合は成長投資に消極的になる可能性もあるため、バランスが大切です。
Q4: フリーキャッシュフローってどう見るの?
A: フリーキャッシュフロー(FCF)は営業活動によるキャッシュフローから投資支出を差し引いた自由に使える資金です。プラスが続く企業は株主還元や新事業投資に余力があります。例えば信越化学工業は長年安定したFCFを創出し、成長と還元を両立しています。短期的なマイナスでも、設備投資が将来の利益につながる場合は前向きに評価できます。
Q5: 配当性向はどのように判断すればいい?
A: 配当性向は利益のうち株主に還元する割合です。花王は30年以上連続で増配を続けており、株主重視の姿勢が伺えます。短期的な高配当よりも、長期的に増配を続ける企業の方が信頼性が高いといえます。自社株買いの有無も合わせて確認すると、株主還元方針をより正確に判断できます。
Q6: 指標が良くても失敗することはある?
A: はい、あります。例えばROEが高くても借入金による一時的な数値改善である場合、景気悪化時にリスクが高まります。また営業利益率が一時的な原材料価格の下落によるものであれば、持続的な収益力は低い可能性があります。数値の裏にある要因を見抜くことが重要です。
Q7: 投資初心者はどんな点に注意すべき?
A: 単一の指標に頼らず、複数の指標を組み合わせて判断することが大切です。さらに業界特性やマクロ環境(為替や金利)、ガバナンスの透明性なども加味することで、より現実的な投資判断が可能になります。過去の失敗事例を学び、感情に流されず冷静に分析する姿勢も欠かせません。
まとめ
日本株の優良銘柄を見極めるには、ROE・営業利益率・自己資本比率・フリーキャッシュフロー・配当性向といった基本指標を押さえることが第一歩です。しかし、数字だけに頼らず、その背景や持続性を確認することが成功への近道です。読者の皆さんも、次に銘柄を選ぶ際には「数値の意味」を意識し、冷静な投資判断を心がけてみてください。

あとがき
指標を理解することの難しさ
株式投資を続けてきて感じるのは、数値の理解そのものよりも、その意味を現実の経営状況と照らして判断する難しさです。同じROEでも、成長を伴う上昇と一時的な資本圧縮による見かけ上の上昇では意味がまったく違います。数字だけに頼った判断をしたとき、業績が良さそうに見えた企業が翌年に減益や減配を発表することがありました。利益率やキャッシュフローの裏にある経営方針を理解しきれなかったことが失敗につながったと思います。
営業利益率の変動へのとまどい
営業利益率を重視するようになってからも、景気や為替の影響を過小評価していた時期がありました。特に原材料価格の上昇や海外事業の比率が高い企業では、思わぬ要因で利益率が急低下しました。数値の変動に焦って売却したあと、翌年に回復するケースもあり、経営の一時的要因と構造的な変化を区別できていなかったことを反省しています。短期的な変化だけで判断することの危うさを感じました。
安全性を重視しすぎた反省
自己資本比率の高さを重視しすぎて、保守的すぎる選定をしていた時期もあります。財務体質が堅牢な企業を中心に選んだ結果、株価の値動きが鈍く、成長局面において機会を逃すことがありました。安定性は重要ですが、それだけでは投資全体の成果を押し上げることは難しいと実感しました。資本効率や成長余力とのバランスを見る視点が欠けていたと感じています。
フリーキャッシュフローの読み違い
フリーキャッシュフローを確認しながら企業を選定していた時期に、設備投資が一時的に増加した企業を敬遠したことがありました。その後、その投資が新製品開発につながり利益拡大に結びついたことを知り、自分の判断基準の狭さを反省しました。キャッシュのマイナスを単純に悪いとみなすのではなく、その背景を考えるべきだったと感じます。成長期の数字は静的に見ると誤解を生むことを学びました。
配当の安定を過信した経験
安定した配当を出している企業に着目した時期もありましたが、業績の伸び悩みを見逃してしまったことがありました。配当を維持しているからといって安心していると、内部留保が減少し、成長投資が鈍化する状況に気づくのが遅れてしまいます。数字の安定に満足してしまうと、その裏にある経営の停滞を見逃すという失敗でした。配当は結果であって、将来性を示すものではないことを実感しました。
情報を鵜呑みにした失敗
銘柄情報やアナリストの評価を参考にしすぎたこともあります。信頼度の高い情報源であっても、企業の実態や経営者の考え方までは反映されていないことが多いと気づきました。財務指標そのものは正確でも、数字の背景を読み取る力が不足していると、誤った安心感を得てしまうものです。自分の視点で企業を評価しないと、判断の軸がぶれやすくなるという点を痛感しました。
短期的な結果を追いすぎた悔い
投資を始めたころは、決算発表のたびに一喜一憂していました。良い決算に安心して追加投資をしたり、悪い数値が出るとすぐに売却してしまったりしていました。しかし、後から見返すと好不調の波の中に成長の流れがあったことも多く、短期的なデータだけで判断したことが誤りでした。株式投資は数字を通じて企業の長い物語を読むような作業であり、数ヶ月単位で結論を出すものではないと気づきました。
感情に流された判断の反省
数字を分析しても、相場が下落すると不安から売ってしまうことがあります。特に業績が悪化したとき、冷静な判断を保つことの難しさを感じました。思い通りにいかないときこそ、数字の意味を落ち着いて確認することが大切だと頭では分かっていても、実際には感情に影響されていました。この経験から、データに基づく判断を徹底する意識の重要性をあらためて感じました。
学びを積み重ねる中での気づき
投資では、指標の理解よりも、それをどう使うかが難しい部分だと感じています。知識が増えるほど迷いも増えました。たとえば、ROEが高い企業を好んで選んでいたのに、ある年にはROEが低下した企業がその後急成長することがありました。その要因を追ううちに、単一の指標ではなく、複数の観点を組み合わせる必要を感じました。完璧な判断などないことを受け入れるようになりました。
数値の安定に隠れた落とし穴
安定した数値を示す企業を選んでいれば安全だと思っていた時期がありました。しかし、安定の裏には成長の停滞が潜むこともあります。特に売上が横ばいで利益率だけを維持している企業は、将来的に飽和状態を迎える可能性があります。単年では優秀に見えても、5年や10年という期間でみると、成長が鈍化している企業も多く、数字の安定を過信していたことを反省しています。
過去のデータに頼りすぎた経緯
過去の実績を重視しすぎると、変化への対応を見落とすことがあります。長期的に高ROEを維持していても、産業構造の変化に取り残される企業もありました。自動車関連株の選定でそれを痛感しました。過去に強かった企業が将来も同じ優位性を保てるとは限らず、数値の過去推移に偏りすぎたことを反省しました。データは参考にはなりますが、未来を保証するものではありません。
予測不能な要因への対応の難しさ
株式市場では、企業の努力だけではどうにもならない要因があります。世界経済の変化や突発的な出来事によって、財務指標が大きく変化することもあります。そのとき、数値の異常にとまどい、投資判断を誤ったこともありました。企業の努力が見えにくくなる局面こそ、投資の難しさが際立つと感じます。予測不能な変化に完全に対応することはできず、それが株式投資の現実だと思います。
学び直しの必要性を感じた場面
指標を体系的に理解したと思っていても、実際に市場が動くと自分の理解の浅さを痛感することがありました。例えば、自己資本比率の低下を懸念していた企業が、その後の成長投資で利益を大幅に伸ばすことがありました。そのような経験を通じて、一時的な数値変動ではなく、その先に意図があるかを読み取る意識が大切だと感じました。数値を学ぶことは終わりがなく、常に更新していく必要があると思います。
まとめ
日本株の優良銘柄を見極めるための指標は、どれも欠かせないものですが、ひとつひとつを独立して見るのではなく、組み合わせて理解することの重要さを痛感しました。利益率やROEが高い企業でも、キャッシュフローが不安定であれば成長が続かないことがあります。反対に、数値が一時的に低下していても、投資や事業転換の途中である場合も多く、短期的な数字に惑わされない姿勢が必要でした。投資判断では、指標の意味を自分の言葉で理解しようとする努力が欠かせません。これまでの経験を振り返ると、指標を盲信した時期ほど誤りが多く、数字の裏を読み取ろうとしたときに学びがありました。これからも変化を恐れず、数字の意味を丁寧に捉える姿勢を大切にしていきたいと思います。

